こころの安全基地

長年の心理臨床に基づく生活に役立つ心理学をお届けしていきます。

今日から自分でできる認知行動療法 その1


これからお話する事は、私がよく心理カウンセリングの現場でクライアントさんにお話している事です。

シンプルだけれど効果的で、すぐにご自身で応用できる、こころのセルフケアです。

私達は、日々の日常の中で、喜怒哀楽と、実に様々な感情を経験します。

皆さんの最近の生活において、何か強い感情を経験した出来事を思い浮かべてみてください。

すごく嬉しかったことでも、すごく悲しかった事でも、すごく腹立たしかった事でも、すごく怖かった事でも良いです。

こうした時、多くの方が普通に信じているのは、その出来事によって、その感情が引き起こされた、という事です。

 

〇という出来事が、△という感情を引き起こした、という図式です。非常にシンプルです。

例えば、あなたが、一生懸命準備して臨んだ採用面接に通らなくて、ものすごく落ち込んだとします。

この時通常、「面接に落ちたから落ち込んでいる」と多くの方は考えます。面接に落ちたというのが原因で、落ち込みがその結果、というロジックです。

しかし実のところこれは正確ではありません。

例えば、AさんもBさんも同じくらい努力して全く同じ採用面接を受けて二人とも同じように落ちたのに、Aさんはとても落ち込んでいる一方、Bさんはすがすがしい気持ちだった、というような事があります。

同じ出来事、同じ経験なのに、なぜでしょう?

答えは、AさんとBさんは、その出来事に対する解釈、つまり認知が全く異なるからです。

例えば、Aさんは、その会社にどうしても入りたくて、自分にはその会社しかない、と思って面接に臨みました。受かるという自信もありました。

その一方でBさんは、その会社は記念受験的に、受かるはずがないだろうけど受かればいいな、という気持ちで受けました。

Aさんはその結果を破壊的に解釈しました。「この会社に落ちてしまった。自分に居場所はない」「これからどうやって生きていけばいいんだろう」と。

Bさんは、「こんなすごい会社の最終面接までいけたんだ。自分もなかなかすごい。最終面接までいけた事が誇らしい」と解釈していました。

ここまで読んで、皆さんは、AさんとBさんでどうしてそんなにリアクションが違うのかよくお分かりになったと思います。

この、出来事に対する個人の「認知の仕方」に焦点を当てたのが、認知行動療法です。認知行動療法は昨今の日本のメンタルヘルストレンドなので、聞いたことがある方も多いと思います。

認知行動療法(Cognitive-Behavioral Therapy)は、あらゆる心理療法の中でもとりわけ修得しやすいもので、しかも短期間で効果が期待できる事から、国際的に人気のあるものです。

それを臨床で使えるようになるためにはそれ相当の訓練が必要ですが、自分自身に向けて試すのは比較的簡単です。

これからしばらく、認知行動療法について、皆さんが自己改善に応用できるように、できるだけわかりやすく書いていきたいと思いますので、是非お付き合いください。